せとまちコラムSetomachi Column
「がん」とマクロファージ
点滴療法からだに優しいがん治療2022.05.18
「マクロファージ」は体内に異物が入って来ると自然免疫系の主役として活躍しますが、これは表の顔で、実は裏の顔があるのです。何と「がん」と密接な関係を持つ「マクロファージ」が存在し、これを腫瘍関連マクロファージ(Tumor-associated macrophage、以下TAM)と呼びます。近年、TAMは「免疫」を抑制することによって、「がん細胞」の増殖を促進することがわかって来ました。
TAMには種類があり、大きく分けてM1マクロファージ(以下、M1)とM2マクロファージ(以下、M2)の2種類あると考えられています。
M1は免疫活性能が高く、TNFα、IL-6、IL-12などの炎症性サイトカインを産生します。そして、強い抗菌活性、抗ウイルス活性および抗腫瘍効果を発揮します。
一方、M2はIL-10 やTGF-βなどの抑制性のサイトカインを産生します。これらのマクロファージは極性化という環境に応じて、M1からM2へ、またはその逆に変えることが知られています。つまり、一方では免疫を活性化する形態に、他方では免疫を抑制する形態に変化します。これには理由があります。M1は先に述べた通り、高い免疫活性を有しますが、M1型の状態が長くなると正常な組織に障害を引き起こしてしまいます。しかし、M2に変われば「免疫」活性が抑制されるため、その危険を避けることができます。つまり、自身を変えることでアクセルとブレーキを使い分けています。
しかし、そのマクロファージも「がん微小環境内」に入ってしまうと様子が変わってしまいます。多くの「がん組織」においてTAMの多くはM2であり、免疫に対して抑制的に働きます。そして、線維芽細胞や血管内皮細胞などと共にがん微小環境を構成する主要な細胞として活躍するようになります。血管新生や「がん」の浸潤、組織の再構築を促進することよって、がん細胞にとって都合の良い環境を整えていきます。「がん組織」では、TAM とがん細胞は近い位置で密着しており、互いに密接な関係を築いていると考えられています。 これも例のごとく、「がん」が上手くマクロファージを利用しているのです。
以上のようにTAMは「がん細胞」と密接な関係にあり、「がん」の増殖を手助けしています。しかし、裏を返せばTAMの働きを抑制することができれば、「がん」の治療につながります。TAMのほとんどがM2であるため、このM2の活性を抑制する、またはM1への変換を誘導することができれば、がんの増殖を抑制する効果が得られるのです。
当院のマクロファージを活性化させる免疫療法(ハイブリットMAT療法)は、そのM2(TAM)の進行を抑制して、徹底的にマクロファージを活性することにより、本来持っているマクロファージの機能を正常状態に戻していくことを目指していきます。M1とM2のバランスを調整し、「自然免疫」と「獲得免疫」の2つのアプローチで体内の免疫力を強化していきます。
記事監修
米澤 公器
瀬戸のまち統合治療院
よねざわ生活習慣病・脳クリニック院長
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