せとまちコラムSetomachi Column

動脈硬化は改善しないのか? Part2 「原因編:カルシウムパラドクス」

各種検査点滴療法

2022.05.26  2022.12.17

前回は動脈硬化の一つ目の原因となる「酸化ストレス」と「慢性炎症」について説明しましたが、今回は二つ目の「カルシウムパラドックス」についてみていきましょう。

 

カルシウムが足りなくなると、からだは骨からカルシウムを溶かし出します。そして溶け出したカルシウムは血管に入り、細胞に運ばれていきます。このとき、細胞にある普段閉まっているカルシウムの通り道がホルモンの関係で開きっぱなしになり、細胞内にカルシウムが流れこんでしまいます。その結果、実はカルシウムが足りないのに細胞内のカルシウムが増えてしまうという逆説が起こります。これを「カルシウムパラドックス」といいます。パラドックスとは逆説という意味です。カルシウムが骨から出続けると骨粗しょう症、カルシウムが血管の細胞にたまれば動脈硬化となります。

 

ではカルシウムを積極的に沢山摂取すれば良いのでしょうか。米国心臓協会(AHA)の「米国心臓協会ジャーナル」で発表した論文によれば、カルシウム単独のサプリメントの過剰摂取は動脈の石灰化(動脈硬化)を促し、心臓病のリスクを高め、冠静脈の石灰化は、心臓発作その他の命に係わる病気と深く関連していました。さらに、ハーバード大学が行った大規模な調査で、30 歳から55 歳の女性看護師7 万7761 人を対象に、1980 年から実に12 年にわたって牛乳や乳製品の摂取と骨折の関係について追跡調査をしました。その結果、乳製品からたくさんのカルシウムを摂っている人のほうが、そうでない人より骨折しやすいという結果が出たのです。このようにカルシウムを十分に摂取しているのに逆に骨からカルシウムが排出され、動脈硬化の原因になることも「カルシウムパラドクス」と呼ぶこともあります。

 

カルシウムサプリと乳製品いずれも問題はマグネシウムが不足していることが原因となります。つまりカルシウムの摂取は、「マグネシウムやビタミンDと一緒に」が忘れていけないポイントです。当院は細胞内のミネラルを確認するため、オリゴスキャン検査を実施しておりますが、実際に殆どの患者さまでマグネシウム欠乏所見を認めています。

 

従って、動脈硬化の予防の第一はマグネシウムをしっかりと補充することです。当院ではミネラルバランスを重視し、特にマグネシウムを強化した「マグリッチ」をお勧めしています。その上でビタミンD(25OH-VitD)の血中濃度を良好に保ち、魚介類や海藻類などの食事からカルシウムを摂取することが重要となります。ビタミンDについては以前に投稿したせとまちコラム「ビタミンDについて」をご参照ください。

 

前回および今回のコラムで動脈硬化の原因についてご説明しましたが、次回は動脈硬化の治療法についてご説明していきたいと思います。

 

記事監修

米澤 公器

瀬戸のまち統合治療院
よねざわ生活習慣病・脳クリニック院長

             

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