せとまちコラムSetomachi Column
動脈硬化は改善しないのか? Part3 「治療編:キレーション療法」
各種検査点滴療法2022.05.27 2023.04.18
前回、前々回に動脈硬化の原因は「酸化ストレス」と「慢性炎症」、「カルシウムパラドクス」であることを説明しましたが、今回はいよいよ治療法についてです。
長年の蓄積のなれの果てである動脈硬化(石灰化)を改善することは難しいでしょうか?私も以前はそのような患者さまにはバイパス手術などの外科的処置でしか対応ができないと考えていました。しかし、実際にはその様な患者さまでもキレーション点滴により改善することが期待できます。
キレートとは、ギリシャ語でつかむことを意味します。実際に、キレーション点滴は体内の過剰な金属をつかみとって、体外へ排泄させるデトックス機能があります。キレーション療法が動脈硬化に効くであろうことは、1950年代にはすでに報告されていました。近年になり、やっとキレーションが動脈硬化に有効であるとするデータが発表されました。TACT Studyでは、動脈硬化性疾患に対するキレーション療法の有用性を評価する臨床試験の結果が報告されたのです。1708人の心筋梗塞を起こしたことがある患者さんを、キレーション療法を行うグループ(キレーション療法群)と、プラセボグループ(対照群)とに分けて、さまざまなデータを比較検討した結果、・総死亡率、心筋梗塞再発、脳卒中、冠血行再建、狭心症による入院は、キレーション療法群のほうが対照群に比べ有意に少なかったのです。特に糖尿病患者では、キレーション療法がより効果的であることもわかりました。キレーション点滴による動脈硬化改善のメカニズムとして血管壁からのカルシウム除去、有害重金属(鉛や過剰な鉄)の除去、活性酸素の除去、血管壁の弾性改善、血小板凝集抑制、細胞内微量ミネラルの再分配などがあります。実際にキレーション療法を行い、降圧剤の内服が減ったり不要になる患者様も経験しています。
このように、動脈硬化は改善の期待できる病態であることがわかって頂けたのではないでしょうか。当院ではまずは分子栄養学的血液検査や8-OHdG尿検査で動脈硬化を含めた生活習慣病全体のリスク評価を行なった上で、動脈硬化のリスクが高い方にはLOX-indexやCAVY(動脈硬化測定)を追加で検査するようアドバイスしています。動脈硬化が進行している患者様には食事および運動指導の他、サプリメントや点滴を使用して積極的に動脈硬化の改善をする治療も行なっております。
記事監修
米澤 公器
瀬戸のまち統合治療院
よねざわ生活習慣病・脳クリニック院長
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