キレートとは、ギリシャ語でつかむことを意味します。実際に、キレーション点滴は体内の過剰な金属をつかみとって、体外へ排泄させるデトックス機能があります。主に動脈硬化の改善が期待できます。
保険診療での動脈硬化の治療は、血管の狭窄により症状が出現すると、ステント留置やバイパス手術などを行います。それらの治療後には、症状を繰り返し起こさないように糖尿病や脂質異常症に対する薬物治療を行います。私も、脳外科医時代は、頚部内頸動脈狭窄症や頭蓋内の動脈狭窄症に対して、ステント留置術や、頭皮の血管を頭蓋内の血管に繋ぐバイパス手術を行っておりましたが、その後の再発予防は薬物療法のみでは不十分であることは実感しておりました。
一方、キレーション療法が動脈硬化に効くであろうことは、1950年代にはすでに報告されていました。近年になり、やっとキレーションが動脈硬化に有効であるとするデータが発表されました。TACT Studyでは、動脈硬化性疾患に対するキレーション療法の有用性を評価する臨床試験の結果が報告されたのです。1708人の心筋梗塞を起こしたことがある患者さんを、キレーション療法を行うグループ(キレーション療法群)と、プラセボグループ(対照群)とに分けて、さまざまなデータを比較検討した結果、・総死亡率、心筋梗塞再発、脳卒中、冠血行再建、狭心症による入院は、キレーション療法群のほうが対照群に比べ有意に少なかったのです。特に糖尿病患者では、キレーション療法がより効果的であることもわかりました。
キレーションによる動脈硬化改善の考えられているメカニズムとして有害重金属(鉛や過剰な鉄)の除去、血管壁の弾性改善、血小板凝集抑制、血管壁からカルシウムを除去、フリーラジカルの除去、細胞内微量金属の再分配などがあります。
点滴頻度は週に1回×20回のペース
キレーションは通常、週に1回のペースで20回行います。治療の効果を上げるために、適切な食事、運動も大切です。治療の前後には、血液の検査(LOX-index)やオリゴスキャンを行い、酸化LDLの程度、重金属汚染度等を測定し、キレーションの効果を確認していただくこともできます。